特殊伐採とツリーケア
特殊伐採とは
一般的に伐採は、木を根元から切り倒すことをイメージされる方が多いかと思います。これに対し、木に登り、特定の枝や幹を上部から少しずつ切り出してロープで下ろしていく手法を特殊伐採と表現することがあります。
特殊伐採の技術は、以下のような悩みを解決するのに有効です。
- 枝木が屋根や隣家に伸びて迷惑をかけている
- 葉が生い茂りすぎて、庭が暗くなってしまった
- 台風がきて倒れたり、枝が落ちたら大変だ
- 庭が狭くて木を切り倒せない
- 構造物や下層植生を破壊したくない

特殊伐採は「ツリーケア」のための 一手段
しかし、上記のような悩みを解決するためだからといって、むやみやたらに枝葉や幹を切ってしまってよいのでしょうか。「後々の管理が楽になるように、短めに切っておきますね」「手入れしづらい所にある枝葉はすべて切っておきましょう」と提案してもらうと、気が利いて親切という印象を受けるかもしれません。
でもここで少し考えてみていただきたいのです。例えば、爪が長くなったからといって深爪になるほど短く切ってしまったことで、細菌が入って炎症を起こしたり、指先に力が入らず歩きづらくなったり、巻き爪を引き起こしてしまったりと、生活に支障をきたすほどのトラブルに発展したことはないでしょうか。また、髪が伸びてきたからといって、むやみに短く切ったりすいたりするでしょうか。自分も他人も似合っていると納得できるヘアースタイルになるよう、プロに頼んで整えてもらうのではないでしょうか。
樹木も切りすぎてしまうと、光合成の量が減り栄養不足に陥ったり、病害虫が入り込んで最悪の場合枯れてしまいます。また、木のバランスが崩れて風で倒れてしまう、自然な樹形を損ない見た目が悪くなるといったトラブルに発展することもあります。
私たち人間にとって爪や髪を切ることは、健康的な生活を送り、美しさを保つための手段であり、それ自体が目的ではありません。それと同様に、樹木にとっても枝葉や幹を切ることは、健康に長生きし、美観を保ち、周囲の生態系を守る「ツリーケア」のための手段であるべきだと私たちは考えます。

「ツリーケア」で
木と共にする豊かな暮らしを守りたい
私は、自身の仕事に対して、あえて特殊伐採という言葉を選ばないようにしています。私の仕事の主眼は「木を生かす」ためのツリーケアにあるからです。ツリーケアを実践できる有資格者として、アーボリストの役割は、「『樹木に対するお客様のお悩み解決』と『高木の育成・管理』を両立させる策を考えだし、安全・確実に実行すること」だと考えています。安易で乱暴な“特殊伐採”をするようなことは決してありません。
先祖代々受け継いできた木、子の誕生とともに成長してきた木、窓辺から四季折々の景色を見せてくれる木、鳥や虫、動物たちと触れ合わせてくれる木――そんな大切な木にトラブルがあった際には、ぜひ私たちアーボリストを呼んでください。大切な木との豊かな暮らしを、ツリーケアでお守りします。
